【メロディックモチーフ】メロディーをパターンとして捉える

【メロディックモチーフ】メロディーをパターンとして捉える

メロディーを考える時、短い音程の動きをパターンとして整理して、メロディーをそのパターンの繋がりとして捉える事も出来ます。それによってメロディーを作ったり、分析したりするのが容易になるかも知れません。そういったやり方の方法論を考えてみました。

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音程の動きのパターン化

 今回お話する「音程の動きのパターン化」は前回のリズム形の音程バージョンです。
前回の記事も参照される事をおすすめします。

キャッチーで覚えやすいメロディーを作る、あるいは作ったメロディーが今ひとつピンとこない時に改良する為の方法の一つとして、リズミックモチーフの考え方を解説します。モチーフを更に小さく分割し、リズム形をパターンの組み合わせとして考える方法です。

 音程の動きのパターン化とは、4音以内のメロディーの小さな塊の音程の動きをパターンとして分類整理し、メロディーをその小さなパターンの連続と考えて、メロディーを作ったり分析・改良したりする時に役立てようとする試みです。

 具体的には、

  • 前回の記事の方法で作ったリズム形に音程の動きをつけ、メロディーとして完成させる。
  • 歌詞が先にあってそれにメロディーをつける時、歌詞を4音節以内に区切って、対応するメロディーをつける。
  • 頭の中に浮かんだメロディーのアイデアを改良しながら完成させる。

等の場合に使えます。もちろん一からこの方法で作ることも出来ます。

 前回の記事同様モチーフを更に分割した小さな塊を説明上「小モチーフ」と呼びますが、これは一般的な用語の使い方ではないと思いますのでご注意下さい。

 では、具体的な説明に入ります。

パターン化してみる

 小モチーフの音の数を4音以内とし、音程が前の音よりも上がったとか下がったとかいう相対的な位置関係で分類します。
 1音の場合は小モチーフ内での音程の動きは有りませんので、2音・3音・4音で考えていきます。

方向性と位置づけ

 まずは2音の場合で考えてみます。2音だと音程の相対的な位置関係は「上がる」「下がる」「維持」の3種類に分けられます。
 考えたりメモしたりし易いように、図の様に記号でそれぞれを「u」「d」「k」とします。

 2音だけだとこれで終わりなのですが、3音以降の音の位置づけの為、最初に音程が変化した2音の音程を基準にします。

 2つの音程が基準になる事で、図の様に5つの領域に分けられます。
最初の音と同音程を「2」、次の音と同音程を「4」として後は図の通りに1・3・5と割り振ります。

 そして3音目が1~5のどの位置にくるかで分類する訳です。

3音、4音パターン

 という訳で3音の音程の動きを分類すると下の図の様になります。

 こうして分類すると3音の音程の変化パターンは全部で13種類という事になります。

 図の右側、最初に上がるパターンで説明すると、まず一番上の「u・u5」が小モチーフ全体として上がっている感じが強く、下へ行くほど弱くなります。
 「u・u5」「u・k」「u・d3」までは全体として上方向で、最初の音と3音目が同音程になる「u・d2」では上がった分が取り消されて、上向きのエネルギーは持つものの向きとしては横向きになります。更に下に抜ける「u・d1」では向きが反転し小モチーフとしての向きは下向きになります。

 ちなみに「u・u5」の5は書かなくても確定しているので省略しても良いです。ご自分でメモ等される時はお好きなようにして下さい。

 4音目も同じ様に3音目からの変化と位置づけで表します。

 同音程のある「u・k」「u・d2」に4音目を加える場合は3音目と同じく4音目も5つに分かれます。

それ以外の「u・u5」「u・d3」「u・d1」は4音目が2や4の線まで届かずに同じ領域に留まるケースが、それぞれu、d、kの3つのパターンに分かれますので4音目で7つに分かれます。例えば「u・d3」だと「u・d3・u5」「u・d3・u4」「u・d3・u3」「u・d3・k」「u・d3・d3」「u・d3・d2」「u・d3・d1」の7つです。

 ですから4音のパターンの総数は、最初が「u」のパターンが、7×3+5×2=31と「d」で始まるのも同数で31、「k」から始まるパターンは、5+3+5=13ですので合計75種類という事になります。次の項目でまとめて図示します。

トレンド感

 小モチーフ全体で音程の流れのが上昇傾向に感じるか下降傾向に感じるかをトレンド感と呼ぶ事にします。

 トレンドはその形で下の図の様に9種類に分けます。

 それぞれの定義は以下の通りです。

上昇…最初の音が最低音、最後の音が最高音。
上昇から戻り…最初の音が最低音、最後の音が最高音ではない、最後の音が最初の音よりも上。
転換して上昇…最初の音が最低音ではない、最後の音が最高音、最後の音が最初の音よりも上。
2回転換して上…最初の音が最低音ではない、最後の音が最高音ではない、最後の音が最初の音よりも上。
横向き…最初の音と最後の音が同じ

 下向きは全て上下逆です

 3音の場合は2回転換は出来ませんので7種類、4音は9種類のトレンドがあるという事です。
 音程の変化、3音の13パターンと4音の75パターンをトレンドの種別で分類します。全て書くと多いので上向きと横向きの「上昇」「上昇から戻り」「転換して上昇」「2回転換して上」「横向き」の5種類だけ一覧で挙げます。下向きは上向きの上下反転で考えて下さい。上下反転は「u」を「d」に、「d」を「u」にすべて入れ替えれば上下反転した形になります。

上昇

 4音で11パターン、3音で3パターンが「上昇」のトレンドです。
当然ですが「u・u・u5」「u・u」の様に直線的な上昇が最も素直で強い上昇でこのパターンとの違いが大きほど上昇感が弱くなります。
 「上昇」や「下降」のトレンドは比較的分かり易いというか、相対音感があまり鍛えられていなくても音程の変化がどういう構造になっているのか把握し易いと思います。その分、曲を聞く側からしても覚えやすい、印象として捉えやすい面を持った部分であると思うのですがどうでしょうか。

上昇して戻り

 「上昇して戻り」のトレンドは4音が9パターン、3音が1パターンです。
4音のパターンを並べてみると、最高音が2音目か3音目かで感じが違うように思います。

転換して上昇

 「転換して上昇」トレンドも4音が9パターン、3音が1パターンです。
 「上昇して戻り」の場合は最高音の位置で印象が分かれる気がしたのですが、何故か「転換して上昇」の場合は最低音の位置で印象が分かれる気はあまりしないですね。それだけ最高音の印象は強いのでしょうか。まぁ私個人の感覚ですが。

2回転換して上

「2回転換して上」は4音の2パターンのみ。

これも個人的な感覚ですが、どちらのパターンも1・2音と3・4音の並行移動という感じですね、ですから右の「d・u1・d1」が下降で左の「u・d1・u3」が上昇と感じられます。

横向き

 「横向き」のトレンドは4音が13パターン、3音が3パターンです。
横向きのトレンドは最後に戻るという形ですので途中の展開やレンジの幅で印象は様々です。

小モチーフの繋がり

 一つのモチーフを幾つかの小モチーフに分割しますので、同じモチーフ内での小モチーフの繋がりをどう考えるという問題も有ります。
 要は最初の音の位置づけをどう捉えるかなのですが、実用的には、単純に前の小モチーフの最後の音を基準に(u)とか(k)とかを前につけるだけでも普通に使えるのではないかと思います。

 他の考え方としては、細かく指定するなら前の小モチーフの全ての音を基準にして、各音に下から順に2,4,6,8として最大で(前の小モチーフが4音の場合)で9つの領域に分け、かつ最後の音から上がっているか下がっているかと合わせて(u8)等の様に前につける。などの方法もあります。

 いずれにしろ、実際にこの「音程の動きのパターン化」の考え方を使ってメロディーを作る時は、漠然とでも良いのでモチーフ全体の音程の流れをイメージして、それを分割して各小モチーフのトレンドを考え、部品を組み立てるようにそのトレンド形の音程パターンを当てはめていく、というやり方になります。ですからモチーフ全体の流れからいって、前の小モチーフに対して次の小モチーフの最初の音はここ、という位置が自然に決まってくるかと思います。

変化とバリエーション

 構成の関係で音程の動きに繰り返しや類似のバリエーション、変化、対比を作る時、繰り返しは当然同じパターンを使う訳ですが、少し違った類似のバリエーションとして繰り返す時は同じトレンド形の違うパターンを使い、もう少しはっきりした変化が欲しければ「上昇」に対して「上昇して戻り」や「転換して上昇」など、違うトレンド形のパターンを使う、と考えると分かりやすいです。対比感を出すには、上下反転させるのが有効だと思います。

最後に

 よく訓練で絶対音感を得るのは難しい(無理)だけど相対音感は鍛えられると言います。
メロディーを聴いてその音程の構造を把握したり、頭の中に浮かんだメロディーを形にしたりする能力は、相対音感が良くなれば向上するのだと思います。
 相対音感とは少し違いますが、今回書いた各トレンドの音程パターンの特徴を感覚的に掴めればそう言った能力も多少向上するのではないかと私は考えています。

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