【作詞と作曲】曲に歌詞をつける
歌を作る時、作曲と作詞をどういう順序で行うかは人によると思いますが、いずれにしても今までに歌詞や詩などを自主的に書いた事の無い方に、いきなり「では書いて下さい」というのも無理がある気がします。私自身もメロディーのない状態で歌詞だけを先に書くのは無理です。既にいくつか歌詞を書いた事のある今でもそうです。ではどうやって書いているのかが今回の内容です。
詞先?曲先?
先に歌詞を書いてそれにメロディーをつけるのを詞先、逆にメロディーを作ってそれに歌詞をつけるのを曲先、と言うそうです。冒頭にも書いた様に私は歌詞を先に書けませんので、単に想像ですが詞先で作れる方なら曲先でも出来そうな気がします。
もちろん詞先の方が書き易いという方もおられると思います。多分そういう方は出来上がったメロディーに、歌詞の字数・イメージ・イントネーションを合わせて書くよりも、制限のない状態で歌詞を書くほうがやり易いと感じられるのでしょう。
しかし逆に考えると、制限というのは「方向性などを示すガイドライン」でもあります。私なんかはそのガイドラインが無いと何をどこから書けばよいのかわからず途方に暮れてしまいます。
私は曲を作る時は、大体はまず歌の部分を前から作っていきます。もう少し詳しく書くと、いわゆるAメロのメロディー→その部分のアレンジの骨格→歌詞の順で、後はその時によります。歌詞の続きを書いてそれにメロディーをつける事もあれば、他の部分をAメロ部と同じ順序で作ることもあります。
つまり最初の書き始めは曲を先に作って、それを手がかりになんとか歌詞を書きます。ある程度の歌詞ができれば、その続きは流れに沿って書けますので、場合によって詞先だったり曲先だったりする訳です。
まぁそれは私の場合ですが、「歌詞を書くのが苦手」「何をどう書けばいいのか全く分からない」とか思われる方ならこの順序が書き易いのではないかと思います。
その場合一番の難所は最初の作ったメロディーに歌詞をつける時です。そこを乗り越えれば流れに乗れますので、最初のメロディーに歌詞をつける方法を以下で説明します。
イメージ(仮)を掴む
絶対に必要という訳でも無いでしょうが、歌詞を書くための元になるイメージというか、なんとなくこういう歌詞にしよう、というのが先に有ると考えも纏まりやすく、結果的に出来も良い様に思います。元になるイメージというのは、もう少し具体的に言うと「中心になるイメージ」と「歌詞の内容の流れ」です。
テーマまたはコアイメージ
まず、「中心になるイメージ」ですが、自分の中でこれと特定出来るイメージであれば何でも良いです。絵画の様な情景でも、映画の1シーンの様なものでも、何らかの感情でも、思想的なテーマでも、状況設定でも、あるいは仮のタイトルの様な何らかの言葉でも、なんでも構いません。
それに、出来上がった歌詞に現れるのは、この元イメージから派生したイメージや漠然とした方向性であり、元々の出発点になったイメージはあえて自分から説明しない限り自分の頭の中に有るだけなので、この段階では人に知られたら恥ずかしい様なものでも構いません。要は歌詞全体を統一し、連想によって歌詞に使う言葉を引き出す元になる核が有ったほうが良いという事です。
詞先であってもコアイメージが先に有れば書きやすいのは同じかも知れませんが、曲先の場合に有利なのは、先に作ったメロディーや、あるいはアレンジも先に作っていればですが、バックの楽器の音を聞いた時の感覚からの連想がコアイメージを掴む助けになる事です。
つまりDAW上にボーカルのメロディーを仮に何かの楽器で打ち込み、出来ればある程度のアレンジもつけてみたら、改めて客観的に聞き直してみて、どんな感じを受けるか、何を連想するのか考えます。そうやって掴んだイメージを歌詞を書く為のコアイメージとして利用するわけです。もちろんそれとは関係なく思いつけば、それで構いません。
展開または流れ
コアイメージが定まって、書けそうならそのまま書き始めても良いのですが、もう少しイメージを固めるとすれば、歌詞全体の展開を考える事です。
例えば、この部分はコアイメージのどの側面を描き、次の部分はまた違う側面を描くとか、時間的な流れに沿って各場面を描くといった感じで、歌詞の展開を決めます。
これはかなり漠然としていても構いませんし、書いているうちに最初の計画と違ってきても構いません。今書いている部分では何を描くのかを絞り込み、書き易くなればそれで良いです。
言葉を引き出す
どんな歌詞にしたいのか、なんとなくイメージが掴めたら、歌詞を書き始めます。
書きたい内容に沿って、メロディーに合致する言葉を当てはめていく作業になります。
文字数
メロディーに歌詞が合致する条件は、当然ですがまずメロディーの音の数と文字数が一致することです。長音(「ー」の伸ばす発音)をメロディーの2音分に当てたり、無理をすれば2文字分をメロディーの1音に当てたりすることも出来る事もありますので完全に一致しないといけないのではありませんが、歌える程度には一致しないと歌詞になりません。
他の条件としては、普通に読み上げた時のイントネーションや長音が、メロディーの音程の上下や音符の長さに一致する事ですが、これは一致した方が自然ですが必要性の程度は人によって考え方が違うと思います。メロディーにその点では一致しないが意味合い等の最適な言葉と一致するがニュアンスが少し違う気がする言葉のどちらを選ぶかはそれぞれの判断におまかせします。
手順としてはまず休符やフレーズの終わりまでの一塊のメロディーをいくつの単語で埋めるかを考えます。ひとつ単語の文字数を2~5文字位として一塊のメロディーの音の数を分割します。
ここで単語と言っているのは、例えば「青い空を見上げて」という文なら「(青い)(空を)(見上げて)」の3単語で成り立ち、文字数は3・3・4となります。
ですからそれを逆に考えますので、メロディーの音の数が9個であればそれを(3・3・3)、(3・4・2)、(5・4)等に分けられます。これはその中のどれにするか決めるという事ではなく、当てはめられる文の成り立ちを何通りか確認してみるという事です。メロディーを文字数のイメージで捉えてみるだけでも考えるのは楽になります。
そんな感じで単語の文字数の候補を何パターンか念頭に置いた上でメロディーを聞くと、音程の上下とイントネーションが一致した単語が自然と浮かんでその単語で歌っている様に感じる事もあります。そんな時はその単語を採用すれば意外とスムーズに書けたりします。
連想と類語
自然と思い浮かばなければ、文字数に合った単語を片っ端から出していきます。ブレインストーミングの要領で良い・悪いに関わらず浮かんだ単語をとにかく挙げていきます。文字数に合わなくても書きたい内容に合った単語が浮かんだらそれも挙げます。
ここで漠然とでも「書きたい内容のイメージ」を持っていれば、ランダムに無駄とも思える単語を挙げている様でも連想によってだんだん書きたい内容に近づいていくものです。
挙げていくうちに「あっ、これは惜しいかな?」という単語が出てくれば、イメージがより具体的になって更に適した単語を導き易くなってきます。
また、「書きたい内容に合っているけど文字数が合わない」という単語が浮かんだら、類語辞典が役に立ちます。「〇〇 類語」(〇〇は思い浮かんだ単語)で検索すればネット上の類語辞典や類語・連想語辞典が出てきますので見てみると適した単語が見つかるかもしれません。
「これ良いかな」と思う単語が見つかればそれを当てはめてみれば文の構造やイメージがある程度固まってきますので、他の単語がどういう単語か絞られてきます。
形容詞なら「〇〇い」とか文末であれば「〇〇(し)た」等として文を仮に組み立ててみれば、抜けている単語も思いつき易くなると思います。
イメージが固まってくればその分連想が働いて思いつき易くなりますので、一番大変なのは書き初めです。途中で中々適した単語が思い浮かばず詰ってしまう事も有るかと思いますが、そんな時は取り敢えずその線は保留にして、違う候補パターンで考えてみたりするうちに、どれかの線がつながる感じで何とかなるものです。
最後に
ここで書いた様に一つづつブレインストーミング的にとにかく挙げていって良いのを探して埋めていくのは、地道な作業で結構大変かもしれませんが、逆に言うと地道な作業だからこそ、私の様に何も無いところからいきなり歌詞を書く事ができなくても、頑張って手がかりを辿っていけば、なんとか出来るのだと思います。