チャーチモードとダイアトニックコード

チャーチモードとダイアトニックコード

チャーチモードまたは単にモード。主にジャズで理論化されたものですが作曲の初心者の方も覚えておくと便利かと思います。ただ最初は混乱しやすく理解し難い概念でもあります。「モードとは?」からモードをコード上のスケールとして使う方法まで紹介します。

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コード上のスケール

 前回のコードの伸長に関する記事で、ダイアトニックの7thコードに9th・11th・13thのテンションを積み上げたコードの話を書きましたが、13thまでのテンションを積み上げるとスケールの音が全て出てくる、という事に何か不思議、というか妙な感じを受けた方も居られるかも知れません。
 私も初めてその説明を読んだ時、「コードって言うか、それもうスケールやん。」みたいな奇妙な印象を受けたのを覚えています。
 その時にはあまり突き詰めて考えた訳ではないのですが、実はそういう考え方も成り立ちます。

下の図を見て下さい。

 前の方は、薄い黄色がCmaj7で、そこへCmaj13の9th・11th・13thのテンションを同じオクターブにしたものを順にスケールの様に並べてみた図です。後ろは同様にDm7にDm13を重ねています。
 この図を「コードのルート音から始めたスケールが、7thコードをカバーしている」と捉えても良い訳です。

 このスケールが、そのコードに対してメロディーで使える音のスケールと言う訳です。

 私は最初にコード理論について勉強し始めた時、ダイアトニックコードがスケールから作られるという様な説明を読んで、漠然とスケールの上にコードが乗っかっているイメージを持っていました。それも間違いではないでしょうが、それと同時にスケールとはコード上に、それをカバーする形で展開するものでもあります。

 つまり、ダイアトニックの各コードに対し、ルート音から始まるスケールがそのコードをカーバーするスケールとして存在します。

 この使える音で構成されたスケールを「アベイラブルノートスケール」と言います。アベイラブル(available)は「利用できる」という意味ですのでそのまま「使える音のスケール」の意味です。

 そして、メジャースケールとナチュラルマイナースケールのダイアトニックコードのアベイラブルノートスケールが「チャーチモード」です。

チャーチモードとは

 チャーチモードというのは教会旋法とも言い、昔まだ調性音楽の理論が確立する前に教会のグレゴリオ聖歌で使われていたものが、19世末以降ぐらいから調性音楽の制約を越えようとする中で見直され、再解釈されてジャズを中心に使われているそうです。

 モード(旋法)はスケールと大体同じような意味だと思って頂いて良いかと思います。違うのはモードには単に音の並びだけでなく特定の音の性質や使い方の規定のようなものが含まれている事です。

 チャーチモードには、アイオニアン・ドリアン・フリジアン・リディアン・ミクソリディアン・エオリアン・ロクリアン、の7種類が有ります。名前がギリシャ風ですが、実際ギリシャ由来だそうです。

 アイオニアンがメジャースケールと同じ音の並びでCメジャースケールならCアイオニアンとなります、その第2音をルートにしたのがドリアン、以降1音づつルート音をずらしていきます。

Cメジャースケールの7つのモードの構成音と音程差をまとめると、下の様になります。

 コードと同じ様に第三音が、M3(長三度)のメジャー系モードとm3(短三度)のマイナー系モードに分けられます。
 メジャースケールは明るい雰囲気でマイナースケールが暗い雰囲気とよく言いますが、その言い方で言うと、明るい順に、メジャー系モードでは、リディアン、アイオニアン、ミクソリディアンで、マイナー系モードでは、ドリアン、エオリアン、フリジアン、ロクリアンとなります。

 メジャースケールとアイオニアンが同じ音の並びと書きましたが、CメジャースケールとAナチュラルマイナースケールは平行調ですので、AエオリアンはAナチュラルマイナースケールと同じ音の並びになります。

 それぞれの違いを比較しやすいように並べると以下の様になります。

メジャー系

アイオニアン     R・2・3・4・5・6・7 (メジャースケール)
リディアン      R・2・3・#4・5・6・7
ミクソリディアン   R・2・3・4・5・6・♭7

マイナー系

ドリアン     R・2・♭3・4・5・6・♭7
エオリアン    R・2・♭3・4・5・♭6・♭7 (ナチュラルマイナースケール)
フリジアン    R・♭2・♭3・4・5・♭6・♭7
ロクリアン    R・♭2・♭3・4・♭5・♭6・♭7

 チャーチモードの使い方としては、今回説明している様なアベイラブルノートスケールとしての使い方の他にも、キースケールのように使う使い方もあります。

 その場合、例えばDドリアンならDmやDm7をトニックとしてコード進行を作り、Dドリアンでメロディーを作る訳です。

コードとモードの関係

 各ダイアトニックコードに対応するチャーチモードはメジャースケールなら、

  Ⅰmaj7…アイオニアン
  Ⅱm7…ドリアン
  Ⅲm7…フリジアン
  Ⅳmaj7…リディアン
  Ⅴ7…ミクソリディアン
  Ⅵm7…エオリアン
  Ⅶm7(♭5)…ロクリアン

 ナチュラルマイナースケールなら

  Ⅰm7…エオリアン
  Ⅱm7(♭5)…ロクリアン
  ♭ⅢMaj7…アイオニアン
  Ⅳm7…ドリアン
  Ⅴm7…フリジアン
  ⅥMaj7…リディアン
  Ⅶ7…ミクソリディアン

となりますが、これをコードの種類ごとにまとめると

   maj7…アイオニアンまたはリディアン
    m7…ドリアンまたはフリジアンまたはエオリアン
    7…ミクソリディアン
    m7(♭5)…ロクリアン

 となります、つまりmaj7のコードのアベイラブルノートスケールはアイオニアンかリディアンで調性によってそのどちらかを使うという事になります。

 マイナーキーで使うⅤ7はハーモニックマイナースケールのダイアトニックコードと考えますのでハーモニックマイナースケールの第5音から始めたスケールがアベイラブルノートスケールになります。これはハーモニックマイナーパーフェクト5ビロウスケールという名前が長くて難しそうですが、下の様なスケールです。

R m2 M3 P4 P5 m6 m7

ルートがGなら G・♭A・B・C・D・♭E・F です。

アボイドノートと特性音(キャラクターリスティックノート)

  各チャーチモードを構成する音について見ていきたいと思います。

コードトーンとテンション・アボイドノート

 モードの各音は「コードトーン・テンション・アボイドノート」の3種類に分類されます。

コードトーン

 チャーチモードをアベイラブルノートスケールとして使用する時、ルート音・第3音・第5音がコードトーンになりますが、maj7thコードのアイオニアンとリディアンの場合はそれに加えて第6音も準コードトーンとして扱われます。第7音(長七度)はテンションです。m7th・7thのコードでは第7音(短七度)もコードトーンです。

テンションとアボイドノート

 コードトーン以外の音はテンションかアボイドノートということになります。

 アボイドノート(回避音)とは、前回のコードエクステンションで説明した「テンションとして使わないほうが良いとされる音」の事を言います。

 アボイドノートは不協和度が高いのでスタックコード(コードの音を同時に鳴らす奏法)としては使わない方が無難ですが、単音のメロディーの場合は不協和でも隣の音に移行して解決する等の方法も有りますので、使ってはいけないという事では有りません。ただ長く伸ばしたりといった余り目立つ様な使い方はしないほうが良いという事です。

 まとめると以下の様になります。

・アイオニアン
コードトーン…R・3・5、準コードトーン…6、テンション…7・2(9)、アボイド…4

・ドリアン
コードトーン…R・3・5・7、テンション2(9)・4(11)・6(13)、アボイドなし

・フリジアン
コードトーン…R・3・5・7、テンション4(11)、アボイド…2・6

・リディアン
コードトーン…R・3・5、準コードトーン…6、テンション7・2(9)・4(11)、アボイド…なし

・ミクソリディアン
コードトーン…R・3・5・7、テンション…2(9)・6(13)、アボイド…4

・エオリアン
コードトーン…R・3・5・7、テンション…2(9)4(11)、アボイド…6

・ロクリアン
コードトーン…R・3・5・7、テンション…4(11)・6(13)、アボイド…2

特性音

 先に「maj7のコードにはアベイラブルノートスケールとしてアイオニアンまたはリディアンが使えて、調性によってそのどちらかを使う」と書きましたが、その辺りをもう少し詳しく説明したいと思います。

 例えばCメジャーキーなら調性に従えば、Cmaj7にCアイオニアン、Fmaj7にFリディアンという事になります。キーがGメジャーであればCmaj7がⅣになりますからCリディアンです。

 しかしCメジャーの曲を作っている時、ちょっと茶目っ気を出して(?)あえて調性を乱し、本来はトニックであるCmaj7にCリディアンを使うといった事も可能な訳です。この場合、厳密にはこのCmaj7はGメジャーから借りてきたという事になり、リディアンですからFを半音上げて#Fにして使います。そうするとリディアンにはアボイドノートが有りませんので#11もテンションとして使えることになります。

 逆に言うとアイオニアンとリディアンの違いは第4音がナチュラルか#かだけですので、ある曲のコードがCmaj7の部分だけ聴いた時、Fか#Fが出てくるまでは、キーがCメジャースケールなのか、Gメジャースケールなのか分からないという事でも有ります。
 こういった、リディアンの#4の様にそれがリディアンであると決定づける音を特性音(キャラクターリスティックノート)と言います。

 各チャーチモードの特性音は、アイオニアン…4、ドリアン…6、フリジアン…♭2、リディアン…#4、ミクソリディアン…♭7、エオリアン…2と♭6、ロクリアン…♭5、になります。

 そのキーらしい特徴をはっきりさせたい時は特性音を意識して使うと良い訳です。

最後に

 今回のモードの話がコードとメロディのつなぎ的な話になります。
もちろんコード理論にもダイアトニック外のコード等色々まだあるのですが、一旦ここまでで区切りにして次回からメロディーの作り方の話をしたいと思います。

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