【ミキシング基礎】ディレイの基本と使い方

【ミキシング基礎】ディレイの基本と使い方

 ディレイはシンプルでありながら応用範囲が広く、DTMにおいて様々なトラックで使えるエフェクターです。ディレイを使って音に厚みや広がりを持たせたり、シンプルなフレーズにひねりを加えたりと工夫次第で楽曲のクオリティーを引き上げる事も可能です。

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ディレイとは

 ディレイはやまびこの様な反響音を付加します。基本的な仕組みは、原音をフェードバックするという比較的シンプルなエフェクターですが、工夫すれば応用範囲は広く、よく使われます。

ディレイの基礎知識

 前回説明したリバーブと同じく、ディレイも原音を変化させて出力するのではなく、「原音+エフェクト」と付加して出力するエフェクターですので、センドリターンで使用できます。送り元のトラックで原音をエフェクトトラックでエフェクト音を出すやり方です。

 センドリターンのやり方については前回の記事をご覧ください。

 センドリターンで使用する事によって、同じ設定のディレイを複数のトラックで共有してCPUの負荷を抑えたり、ディレイ音にのみ別のエフェクターを掛けたりできます。

 原音と反響音で音質が変化するというのは感覚的にも自然なので、多くのプラグインで「ディレイ+別のエフェクター」という構成になっています。最も多く殆どのプラグインで付いて いるのはフィルターです(フィルターは別のエフェクターとは言えないかも知れませんが)。他にはピッチや音量にゆらぎを作り出すモジュレーション系やサチュレーション等の軽い歪み系が良く付いていたりします。手持ちのディレイのプラグインにこれらのエフェクターが付いていなくても、センドリターンでこれらのエフェクターを掛けて響きを変えられます。

 ディレイを使用する主な目的は音に厚みを出し複雑さを増す事です。極端な言い方をすれば、そのままではシンプルすぎて、どうかするとやや間延びしそうなフレーズでもディレイを掛ける事で厚みと変化を得られます。良くないフレーズを誤魔化すというのではなく、そうする事で他の方法では得難い独特の雰囲気を演出出来ます。

 「厚みを出す」の派生として、ディレイの音を左右に動かして広がりや浮遊感を出すといった使い方も出来ます。

ディレイの種類

 ディレイの掛け方には以下の3種類があります。

シングル(モノラル)ディレイ

プラグインによって、表示が「シングル(Single)」だったり「モノ(Mono)」だったりしますが、要するに最もシンプルな、左右のチャンネルで同じモノラルのディレイです。

ピンポンディレイ

右と左で打ち返されるピンポン玉のように、反響音が左右から交互に聞こえます。
多くのプラグインでモノとピンポンが切り替えられます。

ステレオディレイ

反響音が返ってくるタイミングを左右でズラす等、右と左の反響音を違う設定に出来ます。こうする事によって左右に広がりと厚みが出ます。

 プラグインの種類としては、シングル(モノ)ディレイかステレオディレイで、シングルディレイでもピンポンが出来るプラグインは多いです。

基本パラメーターと調整

 ディレイの基本パラメーターのそれぞれの意味と調整の基本パターンについて説明します。

基本パラメーター

ディレイ(タイム)

 反響が返ってくるまでの時間を設定します。マニュアルで ms(1/1000秒)単位で調整する方法とDAWのテンポとシンクロして1/8(8分音符分の長さ)等の様に設定する方法があります。「.」または「D」とついていれば「付点」の意味で、例えば「1/8.」や「1/8D」なら「付点8分音符」です。「T」とついていれば3連符の意味になります。

フィードバック

 反響を繰り返す強さを、前の音に対して何%の音量で返ってくるかで設定します。ですから100%にすると減衰せず延々と繰り返し、少なくするとすぐに減衰するので繰り返しの回数が少なくなります。

ミックス

原音とディレイ音の比率を設定します。Wet側いっぱいにすればディレイ音のみになります。
挿入で使う場合は原音に対してディレイ音が適度な大きさになる様に調整し、センドリターンで使う場合はディレイ音のみにします。

調整の基本パターン

 大まかに言って、ディレイの使い方はショートディレイとロングディレイの2通りが有ります。

 名前の通りディレイタイムの違いなのですが、ショートディレイは原音とディレイ音がつながって聞こえる程にディレイタイムを短くします。

 感覚として30ms以下くらいの間隔で聞こえた音はほぼ1つの音として聞こえます。ショートディレイの場合はこの30ms前後に設定して原音とディレイ音を重ねる事で厚みのある太い音として聞かせるのが目的です。フィードバックは余韻っぽく聞こえますので余韻の長さを調整する感覚で。

 ロングディレイの方は間隔の開いた反響として聞かせる訳ですが、この場合基本的にはテンポシンクで使う事が多いです。フィードバックは目的によりますが、あまり強くすると鬱陶しいので程々に。

使い方の例

 上記の基本パターンを具体的な使い方でもう少し詳しく説明します。

ボーカルのショートディレイ

 歌モノの曲なら、普通はボーカルを最も目立たせたいと思います。しかし、エフェクトの掛かっていないそのままの声ではバックの楽器の音に押され気味になるというか、存在感が薄かったりします。そんな時にボーカルを押し出しの強い存在感のある声にする方法の一つがショートディレイです。

 ショートディレイは上記の通りディレイタイムを30ms前後に設定しますが、ステレオディレイであれば片方を20msもう一方を40msという具合に左右で20msぐらいの時間差をつけてステレオ感の広がりを出すというテクニックもあります。

 もちろんボーカルにしか使えない訳ではなく、リードをとる楽器等の音を太くしたい時にも使えます。

 同じく音を太くする目的で、ボーカルに軽く歪み系のエフェクトをかける事も有りますが、センドリターンを使ってショートディレイのディレイ音にのみ歪み系エフェクトを掛けるのもおすすめです。この場合元々ディレイ音は原音より抑え気味に調整するでしょうし、遅れて入る音なので結構ガッツリ目に歪ませても大丈夫です。

シンセの分散和音

 別にシンセでなくても良いのですが、アルペジオ等のブロークンコードにテンポシンクで1/8か1/16位のロングディレイを掛けるというテクニックです。これによって浮遊するような独特の雰囲気が出ます。

 この場合はステレオディレイならマニュアルでテンポシンク近くに設定して上のショートディレイと同じく左右に20msぐらいの時間差をつけたり、モジュレーション系のエフェクトを併用すると効果的かもしれません。フィードバックはケースによりますが30%ぐらいから調整してみてください。

リズム隊にテンポシンクで微かに

 上のシンセの分散和音ではディレイ音も割とはっきり聞かせますが、こちらの場合は、そのつもりで聞けば気がつく程度に微かに入れます。

 ドラムで音符の合間に、ゴーストノートとかグレースノートとか呼ばれる、極弱く叩いた音を入れてノリを出すテクニックがあります。このゴーストノートを入れる感覚でテンポシンクのディレイを微かに入れてリズムにひねりを加える訳です。

 ですからフィードバックも無し、もしくは極弱くします。ディレイタイムはテンポシンクで1/8、1/16、1/8.等で入れます。

 これは、センドリターンで、ドラム、ベース、スタックコード等のリズムを刻む楽器で共有してもよいですし、どれか1つの楽器で単独に掛けてもよいです。

最後に

 終わりの方で使い方の例として3つに分けて書きましたが、後の2つはその中間的な感じやディレイタイムのとり方で様々な楽器トラックに対しそれぞれ適した使い方が考えられるかと思います。いずれにしても、ディレイはあまりくどくしなければ、色々な応用を考えられます、ぜひ色々と試してみてください。

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