【ミキシング基礎】パンでの定位~音像を配置する。

【ミキシング基礎】パンでの定位~音像を配置する。

 ミキシングで各トラックをステレオの左右どの位置に定位するかを決めるのが「パン」です。パンで音像を定位する時にもその配置の仕方にコツというか「こうした方が良い」という原則的な考え方があります。今回はパンの調整に関する考え方について説明します。

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ステレオでの音の配置イメージ

 ミキシングというのは各トラックをステレオの2chに落とし込でいく作業です。
 ステレオの左右に広がる幅の、どの位置に定位するのかは「パン(Pan)」のツマミを調整して決めますが、各トラックの楽器の音は倍音を含んだ、ある程度の幅を持った周波数帯域として表されるので、それを配置するのは下の図の様な平面上に配置するイメージになります。

 わざわざ図にする程でもなかった気もしますが、とにかく横軸にステレオ左右の広がりがあり、縦軸に各楽器の持つ倍音の周波数成分の幅があります。パンで左右の位置決めをするのはこの平面上に音を配置していくという事になります。
 更に言うと残響・反響の返り方で決まる「奥行き感」が加わって3次元的なイメージになるのですが、ここでは奥行き感は置いておきます。

 よく、「音が団子になる」という言い方をするのですが、複数の楽器の音が図の平面上の同じ位置、つまり周波数帯域の重なるトラックが、同じパンで配置されると音が重なってごちゃごちゃした感じになってしまいます。ですから周波数帯域が重なるトラックはパンを左右に振り分けるのが望ましいです。望ましいのですが、そうもいかない部分もあります。

 重なってしまう場合は、周波数帯域の中の主になる成分や抑えても大丈夫そうな成分をチェックして、お互いに譲り合う様に調整します。
 横軸の位置はパンで設定しますが、音の周波数成分をチェックしたり調整したりするにはスペクトラム・アナライザーとイコライザーを使います。この辺の事は次回に書く予定です。

パンの操作


     

 Tracktion6とPodium freeの各DAWでパンのツマミは上の画像の赤い矢印で示した位置にあります。Podium freeはミキサー画面の各トラックのレベルメーターの上にもあります。

パンで各トラックを定位する。

 各トラックの定位は、今まで聞いた曲のイメージ等である程度想像出来るかと思いますが、確認の意味も込めて定位のコツを書いていきます。

 まず原則として重要なのは左右のバランスをとる事です。説明するまでもなく、パンがどちらかに偏った曲をヘッドフォンで聞くのを想像していただければそれが聞きづらいのは容易に分かるかと思います。ですから、前提としてバランスがとれている必要があります。

 その上で先にも書いた通り周波数帯域が重なるトラックは可能な限り振り分けた方が良いです。

中央に定位すべき音源

 定位の原則を具体的に書くと、まず中央に定位するべき音があります。リードボーカル・ベース・ドラムのバスドラとスネアです。
 この中でスネアに関しては中央に定位するのが安定感はありますが、それ以外も多少検討の余地は有ると思います。あまり端の方に持っていくのは変でしょうが、ハイハットを中央にしてスネアはどちらかに少し振るとか、ハイハットとバランスをとる様に振り分けるとか、場合によっては考えてみても良いかと思います。

 バスドラとベースは両方共、低域の音で、どちらかに振ると重心がズレた様な感じがして安定感を大きく損なうので、両方共中央に配置したいです。そうすると周波数帯域が重なるのですが、これに関しては仕方の無い所だと思います。

 リードボーカルも中央でほぼ決まりだと思います。

それ以外の音源を左右に振る

 バスドラとスネアを中央に定位すると書きましたが、それ以外のドラムについては、ドラムがセットされている通りに配置すれば良いです。ですから分からなければ、ドラムセットの画像を探してその見た目通りに定位します。 その際左右はどちらでも、つまりドラムセットに対面しているリスナーの視点でも、ドラムを叩いているプレイヤーからの視点でも構いません。ドラムセット以外のパーカッション、ボンゴやコンガ等はドラムセットの外側に配置する感じで振れば良いと思います。

それ以外の楽器は似た楽器が対応する感じで左右に振り分けます。例えばギターやシンセが2本あったり、コーラス(サイドボーカル)があったり、といった場合それぞれ1個づつ左右に振り分けます。同じ楽器でなくとも例えばアコースティックピアノとシンセが同じ様な周波数帯域であればそれぞれを左右に振り分けます。

 左右に振る楽器が多くて何を外側で何を内側に置くか迷うときは、基本的に曲の構造を形成する中心的な、骨格に近いものを内側に、装飾的な音を外側に定位します。
 これは、例えばドラムかベースのリズム形から始まって1つのモチーフを繰り返しながら、繰り返しごとに楽器が1つづづ入って、だんだん分厚い構成に発展していく、という展開を想像して下さい。この場合に音像がだんだん外側に広がっていくように配置する訳です。
 実際にそういう展開がなくても、その配置がイメージ的にしっくりくるのではないでしょうか。あくまで原則としての話で部分的に例外も出てくるでしょうが。

 
最後に

 パンの定位は特に何も知らなくても、今まで聞いてきた曲のイメージと感覚である程度は出来ると思いますが、最初の方にも書いたように、ミキシングで各楽器の音をスッキリと聞かせる為にはパンの定位と周波数成分の調整が関係します。ですから次回はスペクトラム・アナライザーとイコライザーでの周波数成分の調整に関して書く予定です。

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