【アナログシンセ】 音作りの基本

【アナログシンセ】 音作りの基本

全くの初心者の方向けにアナログシンセでの音作りを、オシレーター・フィルター・エンベロープ、の各部の調整とモジュレーションについて、オススメのフリーVSTシンセであるOB-XdとTyrel N6の実例を交えて、基本的なところから解説します。

 前回の記事でシンセの基礎知識について書いています。
「オシレーターとかエンベロープとかの言葉の意味がわからないよ」っていう方はこちらの記事の後半部のシンセの基礎知識を見て下さい。

初心者の方が良さそうなVSTを探すのも意外と難しいものです。そこで、フリーVSTの探し方や役に立つサイトのご紹介。それとシンセについては探すにも使うにもある程度の基礎知識は必要だと思いますので、音作りの準備も兼ねて基礎知識をまとめてみました

 今回は以前おすすめしたフリーVSTシンセのOB-XdとTyrell N6で音作りのための操作を解説していきます。OB-XdとTyrell N6についてはこちらを見てください。

シンセの無料VSTでのオススメです。初心者の方が揃えておけば良いかなと思うラインアップを考えてみました。最初はプリセットの音を使い、慣れてきたら調整する。と想定して、ある程度プリセットが充実してUIが分かり易そうなシンセを中心に選びました。

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UIを確認

 上記の記事で書いたアナログシンセの基本構成、オシレーター・フィルター・エンベロープ・LFOが、OB-XdとTyrell N6のUIでどの部分が何に当たるのか見てみます。

まずTyrell N6では下の画像の様になってます。

1.オシレーター2基
2.フィルター
3.エンベロープ2基
4.LFO2基

次にOB-Xdの場合は

1.オシレーター2基
2.フィルター
3.エンベロープ2基
4.LFO

となっています。

各部の調整

 続けて各部の調整について説明していきます。

オシレーター

 上の図はアナログシンセのオシレーターで出力される波形で、この四種とサイン波が一般的に使われます。パルス波のパルスの幅をPW(Pulse Wideth)といい、オシレーターで設定するパラメーターです。

 前回の記事でも書いたように減算型アナログシンセは、倍音を含んだ波形からフィルターで一部の倍音をカットする方式ですので、元になる倍音を含んだ波形がが基本になります。その倍音構成は、ノコギリ波が整数倍の倍音を含み、矩形波は奇数倍の倍音を含みます。
 三角波は聴いた感じも倍音の構成でも矩形波に近く、矩形波はPWが50%のパルス波とも言えるので、基本はノコギリ波とパルス波だと言えると思います。

 パルス波の倍音はPW50%の時は奇数倍の倍音で、そこから変化すると偶数倍の倍音も含むようになってノコギリ波に近づきます。

 実際に切り替えて聴き比べていただけたら各々の違いが分かってもらえると思います。

 オシレーターの調声としては波形を選択し、パルス波の場合はPWを調整します。

 OX-bdでは波形の選択(1.)はノコギリ波とパルス波で、両方選択する事も出来るのがちょっと変わっているでしょうか。「DETUNE」(2.デチューン)は二つのオシレーターのピッチを少しずらす事によって音に厚みやゆらぎを加えます。

 Tyrell N6では「SHAPE」のツマミ(1.)を回すとオシレーター1がサイン波→三角波→ノコギリ波→パルス波 の順で変化します。オシレーター2はノコギリ波→パルス波と変化します。
パルス波のPWは左の「OSC MOD」セクションの「PW」のスライダー(2.)で調整します。

 Tyrell6の場合はピッチを少しだけずらすデチューンというよりも、オシレーター2のチューニングを0から最大1オクターブ上まで変えられます(3.)。

フィルター

 フィルターはイコライザー等にも搭載されていて、上の画像は「MEqualizer」の周波数と周波数成分の強さのグラフですが、シンセに搭載されているフィルターも仕組みは同じと考えてもらって結構です。

 フィルターの種類には「ローパス(low-path)」「ハイパス(high-path)」「バンパス(band-path)」「ノッチ(notch)」が有り、各フィルターの特徴は以下の通りです。

ローパス:カットオフ周波数(Cutoff)よりも下をパスして上をカット。
ハイパス:カットオフ周波数よりも上をパスして下をカット。
バンパス:カットオフ周波数付近をパスして他をカット。
ノッチ:カットオフ周波数をカット。

 画像で言うと上の①がハイパス、④がノッチで、各番号の位置の白い線がカットオフ周波数です。
 ローパスはハイパスの逆で、バンパスはノッチの逆でローパスとハイパスの両方を近くに設置した様な形になります。

 フィルターのもう一つのパラメーターの「レゾナンス(Resonance)」は値を上げると設定周波数付近が持ち上がって強調されます。画像下の⑥がローパスのレゾナンスを上げたイメージです。イコライザーについてるフィルターの場合は「Q」という値を調整しますので厳密には違うかも知れませんが、調整した結果としては、ほぼ同じだと思ってもらって構いません。

 カットする側は傾きをもち、カットオフ周波数から離れる程大きくカットされます。この傾きは1オクターブ離れる毎に増大するカットされる音量で、12dB/octの様に表します。カット量は一般的に6、12、24が多いです。

 OX-Bdの場合、調声は「MULTI」のツマミと「BP」のボタンでフィルターの種類を選択します。
「MULTI」(1.)のツマミが左側いっぱいの状態でローパス、真ん中(真上)の状態で「BP」(2.)ボタンがオフならノッチ、オンならバンパス、「MULTI」が右にいっぱいの状態でハイパス、になります。

「24dB」のボタンは押してアクティブの状態にすると、「MULTI」の設定に関わらずフィルターの種類がローパスになり「MULTI」でカット量が調整できるようになります。右いっぱいで6dB/oct、左いっぱいで24dB/octです。

 フィルターの種類とカット量を設定したら「CUTOFF」(3.)のつまみでカットオフ周波数を動かして調整します。レゾナンスは「RESONANCE」(4.)のつまみで調整します。
「ENVELOPE」(5.)のつまみはフィルターエンベロープでカットオフ周波数を変化させた音をミックスする割合を設定します。

 Tyrell N6の場合は、フィルターの選択は「VCF MODE」(1.)で「LP/HP」と「BP」を切り替えられます。「LP/HP」を選択して「MIXSPR」(5.)が一番下ならローパス、一番上ならハイパス、その間は両方のミックスになります。

カット量は「VCF POLES」(2.)で12、24、36から選択できます。
カットオフ周波数は「CUT」(3.)でレゾナンスは「RES」(4.)で調整します。

「VCF MODE」が「BP」でバンパスになるのですが、この時「VCF POLES」の値によって「MIXSPR」の動作が変わります。12dB/octの時は「MIXSPR」を変えても何も変化しません。24dB/octの場合、「MIXSPR」を上げると高域の倍音が強められます。36dB/octの場合は低域を弱めて高域を強めます。

エンベロープ

 エンベロープはノートの開始からの音量の変化を上の画像の様にA・D・S・Rの四つのパラメーターで設定します。各パラメーターは、

A:ノート開始から最大点までの時間
D:最大点からSへ減少するまでの時間
S:そのままノートの終わりまで維持される音量レベル
R:余韻、ノート終わりから音が消えるまでの時間

となっています。
 音量と書きましたがエンベロープにはアンプに対して音量を制御するアンプエンベロープだけでなく、フィルターを制御するフィルターエンベロープも有りますので、その場合音量の代わりに変化するのはカットオフ周波数です。


 基本的な設定例として、上の画像の2つの内どちらかをどちらかを基本型としてそれを変化さたる感じのイメージで調整すると分かりやすいかと思います。

 上の図はピアノの様に頭から強く出てその後減衰していく音です。AとSを0にして音の長さをDで調節します。音質によってアタックがあまりにきつく感じる様ならAを少しだけ動かして立ち上がりを和らげます。他にはSを少し上げて、減衰して完全に消えずに音が残る感じにするバリエーションも考えられます。

 下の図はストリングス等の長い音符で使う楽器でゆっくり、ふわ~と立ち上がってくる感じの音です。この場合はSを最大にしなくてもAとDで適度にバランスを取って調整することも出来ます。

 また、フィルターエンベロープをこんな感じにして、音質が地味な感じで出てそこから広がる様に派手めに変わるという様な設定もよく使われます。

 エンベロープはシンセ以外のVSTインストゥルメントにもついてる事が多いですし、割りと分かりやすいので比較的簡単に覚えられて役に立つかと思います。

OX-BdとTyrell N6での例は特に変わった点が有るわけでもないので割愛させて頂きます。

モジュレーション

 モジュレーションはLFOでオシレーターのピッチやパルス波のPW、フィルターのカットオフ周波数等にゆらぎを作り出します。
 LFOはそのゆらぎの元になる低周波の波を作り出します。その為のパラメーターとして、波形の選択、ゆらぎの速さを決めるレート(Rate)を設定します。レートは波の一周期の時間です。

 モジュレーションにはLFOによるもの以外にリングモジュレーション(Ring Moduration)とクロスモジュレーション(X-Mod:Cross Moduration)が有ります。
この2種のモジュレーションは2基のオシレーターのどちらか一方にもう一方のオシレーターを使ってモジュレーションを掛ける方法です。

 リングモジュレーションではキャリアと呼ばれるオシレーターにモジュレーターと呼ばれる別のオシレーターを掛けてその周波数の和と差が出力されます。これによって元々無かった複雑な倍音が生み出されます。

 クロスモジュレーションは元になるオシレーターをもう一方のオシレーターで周波数変調します。LFOでピッチを揺らすビブラートと違い、音として聞こえる速さで揺らしますので整数倍・非整数倍の複雑な倍音を作り出します。聴いた感じは歪ませた様な音になり、ピッチを微妙にずらすと音が変わります。

 OX-BdではモジュレーションセクションにLFO関連の設定が集められてます。
「RATE」のツマミ(1.)でゆらぎの速さを設定し、その下のボタン(2.)で波形を選択します。

 その横のボタン(3.)でピッチモジュレーションの対象を選択し、上のツマミ(4.)でピッチモジュレーションの深さを調整します。

 更にその右のボタン(5.)でPWモジュレーションの対象を選択し、同じく上のツマミ(6.)でPWモジュレーションの深さを調整します。

 クロスモジュレーションはオシレーターセクションの「X-MOD」のツマミで調整できます。

 Tyrell N6では非常に凝ったモジュレーションの設定ができるようになっています。
元になるLFOの設定をLFOのセクションで行い、対象の設定と掛けるモジュレーションの強さは対象となるそれぞれのセクションで行います。各セクションにはモジュレーションの元になるLFOやエンベロープを選択する「SOURCE」のボタンとモジュレーションの強さを調整する「MOD」のつまみがついています。PWモジュレーションは「MOD」のつまみが有りませんが「OSC MOD」セクションの「PWSRC」でモジュレーションのソースを選択することで掛けられます。

 LFOは2基搭載されています。それぞれのセクションの左上のボタン(1.)で波形を選択し、その下のボタン(2.)でレートを選択します。「RATE」のツマミ(3.)はボタンで選択したレート基準に、そこから長くしたり短くしたりの調整をします。

 ボタンで選択するレートはDAWと同期して時間または音符の長さで選択します。(1/8dotは付点八分音符の長さ、tripは三連符、2/1は2小節の長さです)

「MATRIX」のセクションではクロスモジュレーションとモジュレーションマトリックスを設定出来ます。モジュレーションマトリックスとは、ある対象にモジュレーションを掛けて更にそのモジュレーションにモジュレーションを掛けるというもので、これが2つ搭載されています。

 クロスモジュレーションは「DEPTH」のツマミ(4.)でモジュレーションの深さを調節し、「VIA」(5.)でその深さに掛けるモジュレーションのソースを選択します。「DEST」(6.)で対象を選択します。選択出来るのは「Osc2 FM」(オシレーター2のピッチ)か「Osc2 PWM」(オシレーター2のパルス波のPW)か「Filter FM」(フィルターのカットオフ周波数)になっています。

DESTで選択した対象に、オシレーター1でクロスモジュレーションを掛け、その掛ける深さに対してVIAで選択したソースでモジュレーションを掛ける訳です。

 モジュレーションマトリックスは「MATRIX TARGET」のボタン(7.)を右クリック、または掛けたい対象までドラッグして対象を選択します。

 対象に掛けるモジュレーションのソースを左上のボタン(8.)で選択し。その上のツマミ(9.)でモジュレーションの深さを調節します。

 そのモジュレーションに掛けるモジュレーションのソースを右のボタン(10.)で選択、同じくその上のツマミ(11.)でモジュレーションの深さを調節します。

 リングモジュレーションはフィルターの横にある「MISC」セクションの「RING MOD」と「INPUT SRC」でキャリアとモジュレーターを選択することで掛けられます。RING MODがキャリア、INPUT SRCがモジュレーターです。

最後に

 ということで、アナログシンセで音作りの為の調整方法をまとめてみました。
モジュレーションの部分、特にTyrell N6は少し複雑ですが実際にやってみて把握できれば使うのは楽しいかと思います。
 今回説明した減算型以外の、FMシンセとかは私自身調整が出来るとは言い難いのですがある程度整理してまた記事に出来れば良いなぁと思ってます(単なる願望)。

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